まい ぽじしょん
うるさいばっかりだと思ってた奴と仲良くなったら。
周りがうるさくなった。
どうやら自分もうるさくなったらしい。
でもこーゆー自分 自分で意外と気に入ってる。
あいつにとってのこーゆー位置が嫌いじゃない。
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「おーい、御柳ぃ。
ちょっと付き合えよ。」
その日、特訓を終えて部屋に戻ろうと思った御柳は、珍しい人物に声をかけられた。
黒撰高校3年、小饂飩勇である。
当然御柳は彼と話すことなどほとんどなかったが。
別に嫌いでもなかったし、少し時間をつぶしてもいいかと思っていたので、彼の方に向かった。
「何すか?」
「おう、ポーカーやんねえか?
お前こういうの得意って聞いたしよ。」
寄っていった御柳に、小饂飩は悪戯好きそうな笑みを見せた。
見るからに開けっぴろげな顔だと、御柳は思う。
こういう笑い方は嫌いじゃない。
「いいっすよ。」
「よっしゃ!そうこなくちゃな〜〜!」
御柳の了承の声に小饂飩は嬉々としてトランプを繰った。
トランプ、といえば。と、ふと御柳は聞いた。
「あれ、オカマの弟は一緒じゃねえんすか?」
本人が聞いたら間違いなく怒りだす呼称を使って小饂飩に友人の不在の理由を聞いた。
「ああ、中宮弟はフロだフロ。
なげーんだよあいつ。身だしなみがどーこーとな。」
小饂飩は特に気にしなかったようで、手を止めずに質問に答えた。
そしてそのまま、御柳に問い返した。
「お前こそ猿野とうちのユタはどうしたんだ?
最近ピーに仲良くやってるじゃねえか。」
「村中ならもう寝てましたよ。
…猿野は…知らねーっす。」
御柳がそう答えると。
「ふーん…?」
小饂飩がトランプを繰る手を止め。
面白そうに視線を御柳に向けると。
「なーるほどなあ。」
にんまりと笑いながら、カードを御柳の前に置いた。
その様子に、御柳は少なからずむっとした。
「…何スか?」
小饂飩は、表情を変えた御柳を見てまた面白そうに笑んだ。
「別にー。お前もかーとか思ってさ。」
「…んだよ、お前もって。」
小饂飩は2枚目のカードを渡す。
「だって皆猿野にムチューだからな。」
「はあ?!」
御柳は驚いた。
だが小饂飩はそれに気にもせずにもう1枚御柳にカードを渡す。
「うちのカイちゃんなんかベタ惚れだぜ?
ユタに猿野をとられて内心悔しがってんのバレバレだし。」
「……。」
小饂飩がカイちゃん、と呼んでるのは黒撰高校キャプテンの事だろう。
かなりお堅いというイメージが強い男だが、彼もかと御柳は口をつぐんだ。
小饂飩は更に渡して、言葉を続けた。
「お前んとこのキャプテンもけっこーキツイ目で見てたしな。」
「え…屑桐さんもかよ?!」」
まさか自分のところの厳しい硬いストイックの三拍子な主将まで、と御柳は驚く。
「気づいてなかったのかよ。
お前余裕しゃくしゃくってな顔してて、意外と余裕無かったんだな。」
面白そうに小饂飩は笑うと。
御柳に最後のカードを渡す。
「さて!」
どきっ
とした。
この意外と鋭い3年生に、一瞬全てを見透かされた気がした。
「で お前は?」
「え。」
小饂飩は自分のカードを扇状に開く。
「オレは結構いい位置にいるんだよなー。
猿野とは仲良しだしよー。」
明らかに挑発している。
だが、開けっぴろげに正々堂々と。
そんな相手に、御柳は。
受けてたたないわけも無かった。
(面白ぇ…。)
「オレも悪くない手だぜ?」
手元のカードを開いた。
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「っか〜…あいつ強いじゃねえか…!」
それから1時間後、小饂飩はポーカーに惨敗し、テーブルに突っ伏していた。
本気を出した御柳は強く、小饂飩は2勝38敗を喫してしまった。
「カイちゃ〜ん、やっぱ油断は出来ねえぞ?」
「…そのようだな。」
不敵な笑みを漏らし、現れたのは…黒撰高校の村中魁。
「何だ、猿野置いてきたのか?」
「今日は特訓で疲れているようでな。
大会の最中は「おあずけ」のようだ。」
「…ムッツリ廃業してんな〜…カイちゃん。
このハッキリスケベ。(ムッツリの逆)」
「褒め言葉だ。」
小饂飩は苦笑した。
どうやらこの親友にはまだまだかなわないようだ。
だけど、自分だって。
御柳に言った事は嘘じゃないんだから…と。
ひそやかに小饂飩は、思った。
彼にとってのそーゆー位置を。
まだ誰も、諦めてなんていないから。
end
朽葉さま、大変お待たせしました!
最近他校同士のVSもの…登場人物が格段に減ってて申し訳ありません!!
多人数をうまく扱えないんですね…。
今回は小饂飩をカッコよく、が私的に目標でした…。かなり好きなんで。
長い間お待たせして本当に申し訳ありませんでした。
気に入っていただけるとホント幸いです。
素敵なリクエスト、ありがとうございました!
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